1946年に大阪で創業した「髙石工業株式会社」は、50年以上ゴム製品を製造・販売してきた。日本の水準を満たす部品の調達が難しいとされるベトナムで、貴重な日系サプライヤーとなっている。今回は、パーツの着脱を容易にする独自製品「すべるゴム」や、日本のものづくりを長年支える同社の取り組みについて担当者の方にお話を伺った。
日系製造業を支えるゴム製造会社
グローバル化が叫ばれて久しい近年、国際情勢の変化によって「アジアの工場」は中国からベトナムへ移りつつある。日本からも多くの企業がベトナムへ進出しており、その大半が製造業だ。そんな中、日系企業を悩ませているのが部品の現地調達にかかるコストである。安価な労働力を求めてベトナムへ進出しても、日系企業の水準を満たすサプライヤーが少ないため、部品調達に多大な時間とコストがかかってしまうのだ。
そんな日系企業に救いの手を差し伸べるのが「髙石工業株式会社」である。大阪に本社を置く同社は、水・ガス・空気、油圧用のパッキン製造において50年以上の実績を誇る。長年のノウハウを生かし、ベトナムでも日系企業の細かなニーズに応えるゴム製品を製造・販売している。
「すべるゴム」
水栓機器や浄水器といった水回り品、消防関連のバルブなど、さまざまな機器においてゴムの固着は悩みの種だ。ゴムはもともと固着しやすく、ゴムをはめて組み立てたパーツは時間が経過すると固まってて外れにくくなってしまう。製造現場では潤滑剤を用いるなどして対処しているが、作業員の手間やコスト増加、製品の清潔度低下などが問題だ。そこで活躍するのが同社の「すべるゴム」だ。
「すべるゴム」はその名の通り滑りの良いゴムで、摩擦抵抗が少ない。これまでも日本で使われていたが、従来品は表面をテフロンで覆っているだけで、コーティングがはがれると滑りも悪くなっていた。だが、同社独自製品の「すべるゴム」は、材料に滑剤を配合し、ゴム自体に自己潤滑性を持たせている。配合した滑剤が表面ににじみ出るため、日数が経っても品質を保つことができるのだ。
創業70年以上の歴史を誇る技術
同社創業は1946年にさかのぼる。当初は「千草工業所」として皮パッキング製造を行っていたが、事業はゴムパッキン製造へ拡大。1956年に「髙石工業株式会社」へ改名した。顧客の「できたらいいな」を高品質な製品として実現し、量産を可能にすることで日本のものづくりを支えてきた。
大学と連携して開発した「耐水素ゴム」は、エコカーの燃料補給を行う水素ステーションの重要パーツとして、世界中から注目を浴びている。ベトナムでも日本品質のこだわりは細部まで行き届いている。機械は日本と同じ最新機種を使用し、実際に働くベトナム人社員とのチームワーク形成にも力を入れた。社員との徹底したコミュニケーションで、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの「5S」を強化、これまでで最高のドリームチームになったと自負しているという。ゴム製品でお困りの企業に、必ずや力になってくれるだろう。